世界と出会う、日本の美術

大阪・関西万博が開催されるのを機に、

古今東西の芸術文化の交流から生まれた日本美術の至宝が一堂に会す、オールジャンル展覧会!

古くから、日本列島では海を介した往来によって異文化がもたらされ、その出会いのなかでさまざまな美術品が創り出されてきました。その作品のひとつひとつが豊かな交流の果実であり、いうなれば、日本という「るつぼ」のなかで多様な文化が溶け合って生まれた奇跡なのです。

本展は、弥生・古墳時代から明治期までの絵画、彫刻、書跡、工芸品など、国宝19件(1件は予定)、重要文化財53件を含む200件の文化財を厳選し、日本美術に秘められた異文化交流の軌跡をたどります。

作品紹介

世界が絶賛した日本美術の代表格、北斎の傑作。

富嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい) 神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)
葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵 [前期展示/後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示]

富嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい) 凱風快晴(がいふうかいせい)
葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵 [前期展示/後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示]

富嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい) 山下白雨(さんかはくう)
葛飾北斎画 江戸時代 天保2年(1831)頃 山口県立萩美術館・浦上記念館所蔵 [前期展示/後期は和泉市久保惣記念美術館所蔵品を展示]

江戸時代の「娯楽品」にすぎなかった浮世絵は、海を渡ると芸術として大ブレイク。ことに北斎の版画はゴッホやドビュッシー、クローデルらパリの芸術家に影響を与え、日本美術のアイコンとなりました。北斎の名声は日本に逆輸入され、「グレート・ウェーブ」こと「神奈川沖浪裏」は、世界で最も有名な海の絵として日本のパスポート、新千円札に採用されるまでに。異文化交流が生んだ世界の名品です。


マンガで紹介「るつぼのツボ」 葛飾北斎《神奈川沖浪裏》の巻


世界に向けた日本美の顔、「琳派」の祖。

国宝 風神雷神図屏風(ふうじんらいじんずびょうぶ)
俵屋宗達筆 江戸時代 17世紀 京都・建仁寺所蔵 [通期展示]


万博は、美のターニングポイントだった!

Histoire de l’Art du Japon(『日本美術史』)
千九百年巴里万国博覧会臨時博覧会事務局編 明治33年(1900) 京都国立博物館所蔵 [通期展示・頁替あり]

こちらは、フランス語で編纂された日本初の西洋式日本美術史『Histoire de l'Art du Japon』。明治政府は、日本が「美術」や「歴史」を持つ「文明国」であることを示す必要性を感じ、1900年のパリ万博への参加を契機に、この美術書を編纂、展示しました。翌年には和文でも刊行され、現在の私たちが認識する日本美術史の基礎となったのです。

重要美術品 埴輪(はにわ) (くわ)(かつ)男子(だんし)
伝群馬県太田市脇屋町出土 古墳時代 6世紀 京都国立博物館所蔵 [通期展示]

ボクたち埴輪は、古墳に並べられた焼き物だよ。19世紀の万博では、埴輪のことを日本の彫刻の起源として紹介されてちょっとびっくり。


源流は朝鮮半島。弥生文化の成熟とともに大きくゴージャスに。現存する日本最大、最重量の銅鐸。

重要文化財 突線鈕五式銅鐸(とっせんちゅうごしきどうたく)
滋賀県野洲市小篠原字大岩山出土 弥生時代 1~3世紀 東京国立博物館所蔵 [通期展示]

空海が唐から持ち帰った経典を守れ! 醍醐天皇が作らせた蒔絵の箱。

国宝 宝相華迦陵頻伽蒔絵(ほうそうげかりょうびんがまきえ)𡑮冊子箱(そくさっしばこ) 
平安時代 延喜19年(919) 京都・仁和寺所蔵 [通期展示]

マンガで紹介「るつぼのツボ」 《宝相華迦陵頻伽蒔絵𡑮冊子箱》の巻


面を裂き観音の姿をあらわした不思議な造形は中国伝来、日本では現存唯一。

重要文化財 宝誌和尚立像(ほうしおしょうりゅうぞう)
平安時代 11世紀 京都・西往寺所蔵 [通期展示]


将軍も手に取った?「世上になき物」と珍重され、いつの世でもランキング最上位の茶碗!

重要文化財 耀変天目
中国・南宋時代 12~13世紀 滋賀・MIHO MUSEUM所蔵 [後期展示]

義満、義政、信長、秀吉と伝わった唐物の至宝"大名物"。夏の陣で粉砕するも、集めた破片を漆で継いで奇跡の再生。家康へ。

唐物茄子茶入(からものなすちゃいれ) 付藻茄子(つくもなす)
中国・南宋~元時代 13~14世紀 東京・静嘉堂文庫美術館所蔵 [前期展示/後期は同館所蔵《唐物茄子茶入 松本茄子(紹鷗茄子)》を展示]


蛇のような剣先から、日本では"雨乞い"に用いられた? インドネシアから舶来の珍品。

クリス
インドネシア 16~17世紀 京都・石清水八幡宮所蔵 [通期展示]

大航海時代の南蛮船が日本にもたらした貴重な織物が、秀吉の陣羽織に変身!

重要文化財 鳥獣文様綴織陣羽織
豊臣秀吉所用 桃山時代 16世紀 京都・高台寺所蔵 [4月19日~5月11日展示]


雪舟の名を轟かせたのも、日中交流の実体験。

国宝 天橋立図
雪舟筆 室町時代 16世紀 京都国立博物館所蔵 [6月10日~15日展示]

雪舟は、遣明使節団の一員として明に渡り、本場中国の水墨画を学びました。かの地の風景にも大いに刺激されたのでしょう。天橋立(京都府宮津市)を一見リアルに描いたこの絵も、どことなく中国の西湖(浙江省杭州市)にも似ています。


国宝級の絵巻が里帰り!命がけで海を渡った遣唐使が繰り広げた奇想天外な物語。

吉備大臣入唐絵巻 巻第四(部分)
平安時代 12世紀 米国・ボストン美術館所蔵 [通期展示]

平安時代の遣唐使、吉備真備(695~775)が、唐の国で皇帝の出す難題に応え、貴重な書物や囲碁を日本へもたらす物語を描いた絵巻。出題を事前に盗み見たり、囲碁の対局中に相手の石を飲み込んだりと、解決法は型破りで、描かれた真備の飄々とした雰囲気も相まって愉快な笑いを誘います。


Museum of Fine Arts, Boston
Museum purchase with funds by exchange from the William Sturgis Bigelow Collection, 32.131.4
Photograph © 2025 Museum of Fine Arts, Boston